LLP(有限責任事業組合) (弁護士 寺澤政治)

平成17年8月1日施行された有限責任事業組合に関する法律により、LLP(有限責任事業組合)と呼ばれる新しい企業形態の選択が可能となりました(2006/2/5)。


リストマーク LLPの特徴

■ LLPとは、事業者の有限責任が認められた組合です。
 LLPは、個人または法人が出資して、それぞれの出資の価額を責任の限度として共同で営利事業を営むための組合です。
 民法上の組合では、各組合員は、組合の債務につき直接無限責任を負いますが、LLPでは、各組合員は、原則として、その出資の価額が責任の限度とされます有限責任・法15条)。
 LLPでは、内部自治が広く認められており、原則として出資者全員で業務執行を行うものとされ(法12条、13条))、総会、取締役、監査機関などの設置も義務付けられておらず、また、損益分配についても、法定の書面で別段の定めをすることにより出資比率と異なる分配を行うこともできます(法33条、規則36条)。
 LLPは、株式会社や有限会社と異なり、法人格を有しないとされますが、登記制度が設けられ(法8条、57〜73条)、法的主体性を有するものとされています。
 LLPは、原則として、構成員課税(パススルー課税)となるため、組合の利益と組合員への配当にダブルで課税されることはなく、組合で損失が発生したときは、組合員が他の所得と通算できるというメリットもあります。
 リスクのある新規事業などベンチャービジネスや共同事業などに活用できる企業形態といえます。

リストマーク LLPの設立

■ 有限責任事業組合契約の締結
 有限責任事業組合契約には、法律に定める記載事項(絶対的記載事項)及びその他の記載事項(任意的記載事項)を記載し、組合員全員が署名し、または記名押印します(法4条)。
 絶対的記載事項には以下のものが掲げられています(法4条3項)。
@ 組合の事業
A 組合の名称
B 組合の事務所の所在地
C 組合員の氏名又は名称及び住所
D 組合契約の効力が発生する年月日
E 組合の存続期間
F 組合員の出資の目的及びその価額
G 組合の事業年度
※ 組合の名称中に「有限責任事業組合」という文字を用いなければなりません。

■ 出資金の払込み
 各組合員が有限責任事業組合契約において定めた出資金の全額を払い込みます(現物出資の場合は、その給付の全部を履行します)。出資金には下限規制がないので、1組合員につき1円の出資とすることも法的には可能です。なお、LLPでは労務による出資は認められていません(法11条)。

■ 有限責任事業組合契約の登記
 @有限責任事業組合契約書の原本、A払込があったことを証する書面(払込金保管証明)、B組合員が法人の場合、当該法人の登記事項証明書、当該組合員の職務を行うべき者の選任に関する書面、当該組合員の職務を行うべき者が就任を承諾したことを証する書面を添付して、有限責任事業組合の事務所を管轄する法務局に申請します(法67条)。
 この登記は、組合契約が効力を生じたときから、主たる事務所の所在地においては2週間以内に、従たる事務所の所在地においては3週間以内に行う必要があります(法57条)。
 登記の際の登録免許税は6万円とされており、株式会社よりも少ない費用で登記が可能です。



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