中小企業の事業承継問題A(弁護士 寺澤政治)
 役員・従業員等への事業承継

役員・従業員等への事業承継も増加しています。その方法について考えてみましょう(2007/6/6)。


リストマーク 役員・従業員等への事業承継

 親族に対する事業承継についてはすでに@で解説しておりますが、役員・従業員等に事業を承継する場合においても、後継者に株式等の事業用資産をどのようにして集中させるかということが最大の問題となります。後継者が安定的に会社を経営していけるようにするためには、株主総会における重要事項の決議に必要となる3分の2以上の議決権を後継者に集中させることを考えるべきですが、親族以外の者に承継させる場合、相続による取得分がありませんので、より綿密に計画を立てておくことが必要となります。


リストマーク 相続人らの権利との調整

 後継者に対する株式の集中のための方法として、相続人等に対する売渡請求議決権制限株式などの会社法の制度の活用が有効であることは、親族に対する事業承継の場合と同じです。
 特に、親族でない後継者に対する事業承継を考える場合、現在の経営者の相続人となる親族に相続される財産を残しつつ、会社の支配権(議決権)を確保する方策が重要となります。そのためには、あらかじめ議決権制限株式を発行し、相続人にはこの議決権制限株式を取得させる等の工夫が必要です。この場合、議決権制限株式については優先(配当)株式にする、または、後継者が取得する議決権付株式については劣後配当株式、無配当株式にする等、権利の内容面でバランスをとることも検討しておく必要があります。



リストマーク MBO(マネージメント・バイ・アウト)の利用

 役員・従業員等に株式を集中させようとしても、そのための資力が十分でないケースが少なくありません。この株式取得資金について、後継者(経営陣)が、その能力や事業の将来性などを担保として、金融機関や投資会社から融資・出資等を受けるMBO(マネージメント・バイ・アウト)を利用できる場合があります。
 MBOを成功させるためには、会社の業績や成長性、経営者の意欲等が必要であることはいうまでもありませんが、さらに、内部統制・コンプライアンス体制の構築など事前準備をしっかりと行い、具体的な裏づけのある事業計画書を作成することがとても重要となります。




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