課長や店長は残業手当の対象外?(弁護士 寺澤政治)


課長や店長には残業手当を支給しないという会社が少なくありませんが、そのような扱いが許されるのでしょうか?労働基準法上の「管理監督者」に該当するか否かが問題です(2009/4/12)。


リストマーク 管理監督者と残業手当等の規制の適用除外

■ 管理監督者に該当すると、残業手当の対象外となる。
 
労働基準法では、「監督若しくは管理の地位にある者」(以下管理監督者といいます)に対しては、残業手当や休日出勤手当を含む労働時間、休憩及び休日の規制の適用を除外しています(41条2号。なお、年休や深夜残業手当は与えなければなりません。)。
 したがって、課長や店長に任ぜられた労働者が、労働基準法上の管理監督者に該当する場合、会社は深夜残業の場合を除き、残業手当の支払義務がないことになります。

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管理監督者とは何か

■ 課長、店長などの肩書きがあるからといって、管理監督者に該当するとはいえない。
 問題は、課長、店長などの肩書きがあるからといって、必ずしも、管理監督者に当るとはいえないという点にあります。
 管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者であり、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請される重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限定されます。
 管理監督者に該当するか否かは、名称にとらわれず、職務内容、権限と責任、勤務態様の実態に基づいて判断すべきであり、そのような地位にふさわしい賃金等(給与、手当、ボーナス等)の待遇がなされているか否かも留意する必要があるとされています(昭和63年3月14日労働基準局長通達150号)。


リストマーク 管理監督者をめぐる過去の裁判例

■ 課長、店長などの肩書きがあっても、管理監督者に該当しないとされた裁判例
 
課長、店長などの肩書きがあっても、管理監督者に該当しないとされた裁判例は、
@  取締役工場長(橘屋事件・大阪地裁昭和40年5月22日判決)
A  銀行の支店長代理(静岡銀行事件・静岡地裁昭和53年3月28日判決)
B  従業員40人の工場の課長(サンド事件・大阪地裁昭和58年7月12日判決)
C  広告会社のアートディレクター(ケー・アンド・エル事件・東京地裁昭和59年5月29日判決)
D  ファミリーレストランの店長(レストラン「ビュッフェ」事件・大阪地裁昭和61年7月30日)
E  カラオケ店の店長(風月荘事件・大阪地裁平成13年3月26日判決)
F  会社の係長・課長補佐・次長等(東建ジオテック事件・東京地裁平成14年3月28日判決)
等多数存在します。
 これらの裁判例においては、当該役職者の職務内容、権限と責任、勤務態様の実態等が考慮され、自己の勤務時間に自由裁量を有していたとはいえないこと(@ABDF)やタイムカード等による時間管理を受けていたこと(CDE)、部下や店員等への人事や考課等に関与していないこと(AE)や関与が一部にとどまり独自の決定権がないこと(BF)、給与等での特段の処遇がないこと(@BC)等などが、その判断要素として挙げられています。

リストマーク 残業手当の割増率

■ 残業手当の割増率は2割5分以上である。
 残業手当の割増の率については、延長した労働時間については2割5分以上、休日労働については3割5分以上であり(割増賃金令)、深夜残業手当が時間外労働でもある場合は、2割5分+2割5分で5割以上の率となります(平成6年1月4日労働基準局長通達1号)。
 たとえば、通常の賃金が時給2000円であるとすると、時間外または深夜労働の場合は割増分を含めて時給2500円以上の賃金を、深夜+時間外労働の場合は割増分を含めて時給3000円以上の賃金を、使用者は支払う義務があることになります。



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