公益通報者保護法と事業者が注意すべき点(弁護士 寺澤政治)


平成18年4月に施行された公益通報者保護法に関し、事業者が注意すべき点についてご説明します(2007/5/31)。


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公益通報者保護法の目的

 公益通報者保護法は、公益通報をしたことを理由とする解雇等の不利益取扱いを禁止し、事業者及び行政機関がとるべき措置を定めることにより、公益通報者の保護を図るとともに、事業者が国民の生命、身体、財産その他の利益のの保護にかかわる法令の規定を遵守すること(コンプライアンス)を図ることを目的としています


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公益通報とは

 公益通報とは、労働者が、不正の目的でなく、その労務提供先の事業者またはその役員、従業員等について通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしている旨を、以下の者に通報することをいいます。
労務提供先の事業者またはその事業者が予め定めた者(内部通報)
■ 通報対象事実について処分、勧告等をする権限を有する行政機関
■ 通報することが通報対象事実の発生またはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者(マスコミ等がこれに該当する場合も考えられます)(外部通報)

 通報対象事実とは、個人の生命または身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律として下表に掲げるものが規定する犯罪行為の事実です。
■ 刑法
■ 食品衛生法
■ 証券取引法
■ 農林物質の規格化及品質表示の適正化に関する法律(JAS法)
■ 大気汚染防止法
■ 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)
■ 個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)
■ その他政令で定めるもの



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公益通報者はどのような保護を受けるのか

 保護要件を満たす公益通報については、これを行ったことを理由とする解雇の無効、労働者派遣契約の解除の無効、降格、減給等の不利益取扱いの禁止などが定められています。
 保護要件としては、不正の目的でないことのほか、通報先ごとに以下の要件があります。
内部通報 通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしていると思料する場合
行政機関
への通報
通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合
外部通報 通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当な理由があり、かつ、次のいずれかに該当する場合
■ 内部通報、行政機関への通報をすれば解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合
■ 内部通報をすれば、証拠隠滅等のおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合
■ 労務提供先から内部通報、行政機関への通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合
面等により内部通報をした日から20日を経過しても、調査を行う旨の通知がない場合または正当な理由がなくて調査を行わない場合
■ 個人の生命または身体に危害が発生し、または発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合



リストマーク 事業者はどのような点に注意すべきか

書面による公益通報に対する是正措置等の通知
 事業者は、書面により公益通報者から公益通報をされた場合は、その通報に対して是正措置をとったときはその旨を、通報対象事実がないときはその旨を、公益通報者に対し、遅滞なく通知するよう努めなければならないとされています。

■ 外部通報を回避するために
 
上記のとおり、書面等により内部通報がなされてから20日を経過しても、調査を行う旨の通知がなかったり、正当な理由なく調査を行わなかったりした場合、マスコミ等の外部に通報を行った公益通報者に対し、解雇その他の不利益取扱いが許されない場合が生じます。したがって、内部通報がなされた場合、20日以内にこれらの対応を採ることが重要です。

■ 通報処理の仕組の整備
 事業者としては、公益通報に関する通報処理の仕組を整備しておくことが重要です。通報窓口及び受付方法の指定(通報窓口を法律事務所等事業者の外部に設置することも可能です)、相談窓口の設置、内部規程の整備、通報受付後の手順・調査や是正措置の実施に関する手順・通報者への通知の手順の策定等を行うべきです。
 内閣府の公益通報者保護制度ウェブサイトには、公益通報者保護法に関する民間事業者向けガイドラインのほか、内部規程集や書式例などが掲載されていますので、活用されるといいでしょう。



リストマーク 公益通報処理のフローチャート

 公益通報者                      事業者





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