改正パートタイム労働法のポイント(弁護士 寺澤政治)


平成20年4月から施行された短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)の改正法のポイントについて説明します(2008/4/17)。


リストマーク 「改正の最大のポイント−パートタイム労働者と通常の労働者の均衡のとれた待遇

■ パートタイマーのうち、通常の労働者と同視すべき者に対しては、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用等の待遇について、通常の労働者と差別的取扱いをしてはならないこと、それ以外の者に対しても、就業の実態に応じ、賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用について通常の労働者と均衡(バランス)のとれた待遇をすることが定められました。
パートタイマーの種類 賃金 教育訓練 福利厚生施設
通常の労働者と同視すべき者
@ 業務の内容及び責任の程度(以下「職務の内容」という)が同じ
A 全雇用期間において、職務の内容及び配置の変更の範囲が同じ
B 労働契約期間の定めなし(反復更新により期間の定めのないものと同視できるものも含む)
パートタイマーを理由として差別的取扱いをしてはならない。(8条1項) パートタイマーを理由として差別的取扱いをしてはならない。(8条1項) パートタイマーを理由として差別的取扱いをしてはならない。(8条1項)
職務の内容及び一定の期間において配置の変更の範囲が同じ者 通勤手当・退職手当等を除く賃金につき、一定の期間において同一の方法により決定するよう努める。(9条2項) 職務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練は同様に実施しなければならない。(10条1項) 利用の機会を与えるように配慮する。(11条)
職務の内容が同じ者 通勤手当・退職手当等を除く賃金につき、職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、決定するように努める。(9条1項) 職務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練は同様に実施しなければならない。(10条1項) 利用の機会を与えるように配慮する。(11条)
職務の内容も、配置の変更の範囲も異なる者 通勤手当・退職手当等を除く賃金につき、職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、決定するように努める。(9条1項) 職務の内容、職務の成果、意欲、能力及び経験等に応じ、実施するように努める。(10条2項) 利用の機会を与えるように配慮する。(11条)

リストマーク 雇入れ時の文書交付

■ パートタイム労働者を雇い入れたときは、速やかに、労働基準法に定めるもののほか、昇給の有無、退職手当の有無及び賞与の有無を文書の交付等により明示しなければなりません。
 労働基準法第15条1項及び労働基準法施行規則第5条では、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対し、@契約期間、A仕事をする場所と仕事の内容、B始業・終業の時刻や所定時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇等、C賃金の決定、計算及び支払方法等、D退職に関する事項その他の労働条件を明示しなければならないものとされ、このうち、@からDまでに記載した事項については、文書で明示することが義務付けられています(違反には罰則があります)。
 パートタイム労働者を雇い入れたときは、さらに、昇給の有無、退職手当の有無及び賞与の有無を、速やかに、文書の交付等により明示しなければなりません(6条。違反には罰則があります)。

リストマーク 通常の労働者への転換推進措置

■ 通常の労働者への転換を推進するために、法の定めるいずれかの措置を講じなければなりません。
 事業主は、通常の労働者への転換を推進するために、パートタイム労働者について、次の@からCまでのうちいずれかの措置を講じなければなりません(12条1項)。
@ 通常の労働者の募集を行う場合、その業務内容、賃金、労働時間等の事項を、掲示等の方法により、すでに雇用しているパートタイム労働者に周知する。
A 通常の労働者の配置を新たに行う場合、その配置の希望を申し出る機会を、すでに雇用しているパートタイム労働者に対し与える。
B 一定の資格を有するパートタイム労働者を対象とした通常の労働者への転換のための試験制度を設ける。
C その他の通常の労働者への転換を推進するための措置を講じる。

リストマーク
待遇の決定に関する説明

■ パートタイム労働者から求めがあったときは、待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明しなければなりません。
 事業主は、パートタイム労働者から求めがあったときは、@労働条件に関する文書の交付等、A就業規則の作成の手続、B通常の労働者と同視すべき者に対する差別的取扱いの禁止、C賃金の決定、D教育訓練の実施、E福利厚生施設の利用、F通常の労働者への転換を推進するための措置に関する決定をするに当たって考慮した事項について説明しなければなりません(13条)。


リストマーク その他の主な義務

 その他、事業主に対し、以下の努力義務が設けられています。
 パートタイム労働者に係る事項について就業規則を作成または変更しようとするときは、その事業所において雇用するパートタイム労働者の過半数を代表すると認められる者の意見を聴くよう努める(7条)。
 パートタイム労働者を常時10人以上雇用する事業所ごとに、パートタイム労働指針に定める事項その他の雇用管理の改善に関する事項等を管理する短時間雇用管理者を選任するよう努める(15条)。
 パートタイム労働者から@労働条件に関する文書の交付等、A通常の労働者と同視すべき者に対する差別的取扱いの禁止、B教育訓練の実施、C福利厚生施設の利用、D通常の労働者への転換を推進するための措置、E待遇の決定についての説明に関し、苦情の申出を受けたときは、事業主を代表する者及び当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする苦情処理機関に苦情の処理をゆだねる等自主的な解決を図るよう努める(19条)。


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