取締役・監査役の責任 (弁護士 寺澤政治)


会社法において取締役・監査役がどのような責任を負うとされているのかについて説明します(2007/1/14)。


リストマーク

取締役の責任

取締役は、その任務を怠ったときは、会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(会社法423条1項)。
 取締役は、@自己または第三者のために会社の事業の部類に属する取引(競業取引)をしようとするとき、A自己または第三者のために会社と取引しようとするとき、B会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするときは、取締役会設置会社では取締役会の、取締役会を設置していない会社では株主総会の承認を受けなければなりません(会社法356条、365条)。
 これらの承認を得ずに、@の競業取引を行った場合は、当該取引によって取締役が得た利益の額は会社の損害額と推定され、また、ABの取引(利益相反取引)により会社に損害が生じた場合は、当該取引を行った取締役だけでなく、会社が当該取引をすることを決定した取締役、当該取引に関する取締役会の承認決議に賛成した取締役も、任務を怠ったものと推定され、その損害を賠償しなければなりません(同423条2項)。これらの責任は、いずれも任務懈怠責任となります。


リストマーク

責任の免除

取締役の任務懈怠責任(会社法423条1項の責任)は、総株主の同意がなければ免除することができないとされていますが(同424条)、当該取締役が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、以下の場合に、責任限度額を超える額につき賠償責任を免除することが可能です。

(1) 株主総会の特別決議(同309条2項8号)による免除(同425条)
(2) 業務監査権限のある監査役設置会社等では、取締役会決議(取締役会を設置していない会社においては当該取締役を除く取締役の過半数の同意)によって免除することができる旨の定款の定めに従って、取締役会決議等による免除が可能です(同426条)。
(3) 社外取締役等については、責任額を限定する契約を締結することができる旨の定款の定めに従って、責任額限定契約を締結することにより、責任限度額を超える額につき免除が可能です(同427条)。

※ (2)、(3)については予め定款にその旨の規定を設けておく必要があります。

 ただし、上述したAの利益相反取引を自己のために行った取締役の責任は無過失責任とされており、免除されません(同428条)。
 この責任限度額は、代表取締役については6年分の報酬、6年分相当の退職慰労金及びストックオプションによる利益の合計額です。それ以外の取締役については4年分、社外取締役については2年分となります(同425条1項、会社法施行規則113条ないし115条)。


リストマーク

違法な剰余金の分配、利益供与の責任

違法な剰余金配当に関する職務を行った取締役等は、会社に対し、連帯して、交付した金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負います。
 会社が分配可能額を超えて株主に対し剰余金の配当をした場合には、当該剰余金配当に関する職務を行った業務執行者
(下表参照)は、会社に対し、連帯して、交付した金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負います(会社法462条1項、461条1項8号、会社計算規則187条8号)。

業務執行取締役
剰余金の配当による金銭等の交付に関する職務を行った取締役
剰余金配当を決議した株主総会において議案を提案した取締役や剰余金の配当に関する事項について説明した取締役
剰余金配当を決議した取締役会において議案を提案した取締役や剰余金の配当に賛成した取締役
監査役等の請求に応じて分配可能額の計算に関する報告をした取締役


株主の権利行使に対する財産上の利益供与に職務を行った取締役等は、会社に対し、連帯して、供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負います。
 会社が株主の権利行使に対し財産上の利益を供与したときは、当該利益供与に関する職務を行った取締役等
(下表参照)は、会社に対し、連帯して、供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負います(会社法120条、会社法施行規則21条)。

当該利益供与に関する職務を行った取締役
利益供与を決議した取締役会において決議に賛成した取締役や利益供与に関する議案を提案した取締役
利益供与を決議した株主総会において利益供与に関する議案を提案した取締役・当該議案の決定に賛成した取締役・当該議案の提案をする旨の取締役会決議に賛成した取締役や利益供与に関する事項について説明した取締役


■ 違法な剰余金の分配や利益供与の責任は、原則として免除されません。
 違法な剰余金の分配や利益供与の責任は、特別法定責任とされており、職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときまたは総株主の同意がある場合を除いて、免除されません(会社法462条2、3項、120条4項ただし書き、5項)


リストマーク

第三者に対する責任

取締役は、その職務を行うについて悪意または重大な過失があったときは、これによって会社以外の第三者に生じた損害を賠償する責任を負います(会社法429条1項)。
 取締役が、株式、新株予約権、社債等を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知や、当該募集のための説明資料についての虚偽の記載等をした場合、計算書類及び事業報告ならびにこれらの附属明細書等において重要な事項についての虚偽の記載等、虚偽の登記や公告を行った場合も、当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときを除き、同様の責任を負います(同条2項1号)。


リストマーク

監査役の責任

 監査役も、取締役と同様、その任務を怠ったときは、会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(会社法423条1項)。責任限度額は社外取締役の場合と同じです。ただし、監査役の場合は、定款の定めに基づく責任額限定契約の規定は適用になりません(同424条ないし426条)。
 また、監査役が、監査報告において重要な事項についての虚偽の記載等を行った場合には、会社以外の第三者に生じた損害を賠償する責任が問題となります(同249条2項3号)。



本サイトの記載内容や写真等は著作権法により保護されております。
無断で転載、複写することはできません。
トップページ以外への直リンクは禁止します。

(c) copyright, Lawyer MASAHARU TERAZAWA All rights reserved.