下請法とは?(弁護士 寺澤政治)


わが社の取引方法が「下請法」に引っかからないか?最近このような相談をよく受けます。「下請法」とは「下請代金支払遅延等防止法」のことをいいます。中小企業庁では、「下請かけこみ寺」という下請事業者の相談窓口を開設しております。他の事業者に対し製造委託その他の業務委託を行っている会社は、「下請法」をよく理解しておく必要があります(2008/11/26)。


リストマーク 「下請法」が適用されると、親事業者はどのような義務を負うのか?

■ 「下請法」が適用されると、親事業者(業務を委託した側)は、下請業者に対し、代金の支払期日の制限、委託の際の書面交付等の義務を負うことになります。 
 親事業者が負うことになる義務は以下のとおりです。
下請代金の支払期日の制限
@ 下請代金の支払期日は、納品日(役務提供委託の場合は役務の提供を受けた日)から起算して60日以内で、かつ、できる限り短い期間内で、定めなければなりません。
A 下請代金の支払期日を定めなかったときは、納品日が支払期日と定められたものとみなされます。
B @に違反した支払期日を定めたときは、納品日から60日目(60日を経過した日の前日)が支払期日と定められたものとみなされます。

書面の交付等
 委託の際に、下請事業者に対し、給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他必要事項を記載した書面等を交付しなければなりません。

禁止行為(下請事業者に対し以下の行為をしてはいけません。)
@ 受領拒否の禁止]下請事業者に責任がないのに給付の受領を拒むこと。
A 支払遅延の禁止]下請代金を支払期日経過後も支払わないこと。
B 代金減額の禁止下請事業者に責任がないのに代金を減額すること。
C 返品の禁止]下請事業者に責任がないのに納品された物を返品すること
D 買い叩きの禁止]通常支払われる対価に比べて著しく低い下請代金の額を定めること
E 購入・利用強制の禁止]下請事業者に対し正当な理由がないのに自己の指定する物・役務を強制的に購入・利用させること
F 報復措置の禁止]公正取引委員会や中小企業庁に対し申告したことを理由として、取引を縮小、中止する等の不利益な取扱いをすること
G [支給原材料等の早期決済の禁止]納品物の原材料等を自己から購入させた場合に、下請事業者に責任がないのに下請代金の支払期日より早い時期に、下請代金の額から原材料等の額の全部または一部を控除したり、支払わせたりすること
H [割引困難な手形の交付の禁止]下請代金の支払につき、支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難な手形を交付すること
I [利益提供要請の禁止]自己のために金銭。役務その他の経済上の利益を提供させること
J [不当な変更・やり直しの禁止]下請事業者に責任がないのに、給付の内容を変更させ、または、納品後にやり直させること

遅延利息
 下請代金の支払期日までに支払わないときは、納品日から60日を経過した日から支払をする日まで年14.6%の割合による遅延利息を支払わなければなりません。

書類等の作成及び保存
 委託をしたときは、給付、給付の受領、下請代金の支払その他必要事項を記載・記録した書類または電磁的記録を作成し、これを2年間保存しなければなりません。
 このうち、2の書面の交付等、5の書類等の作成及び保存義務に違反した場合などには罰則の適用があります。違反行為に対しては、公正取引委員会や中小企業庁による報告徴収や立入検査等が実施され、公正取引委員会から勧告を受けることになる場合もあります。

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「下請法」が適用される親事業者・下請業者とは?

■ 「下請法」が適用されるか否かは、事業者の資本金の規模と取引の内容によります。たとえば、物品の製造委託の場合は、資本金3億円超の法人が資本金3億円以下の法人または個人に委託する場合や、資本金1000万円超の法人が資本金1000万円以下の法人または個人に委託する場合、「下請法」が適用されます。
物品の製造・修理委託、プログラム作成委託、運送・物品の倉庫における保管・情報処理の委託を行う場合
親事業者 下請業者
資本金3億円超の法人 資本金3億円以下の法人
個人

資本金1000万円超の法人 資本金1000万円以下の法人
個人


プログラム以外の情報成果物作成委託、運送・物品倉庫保管・情報処理以外の役務提供委託を行う場合
親事業者 下請業者
資本金5000万円超の法人 資本金5000万円以下の法人
個人

資本金1000万円超の法人 資本金1000万円以下の法人
個人




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