職務発明 (弁護士 寺澤政治)

青色LED訴訟の東京地裁判決で一躍世間の注目を集めた職務発明について考えてみましょう(2006/2/19)。


リストマーク 従業員が職務発明をした場合特許を受ける権利は誰に帰属するのか?

特許を受ける権利は従業員に帰属し、使用者はその特許権について通常実施権を有する。
 職務発明とは、「その性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至つた行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明」をいいます(特許法35条1項)。例えば、機械メーカーの研究開発部門に従事する従業員が、その研究に関連する発明をした場合などをいいます。
 職務発明についての特許を受ける権利は従業員等に帰属しますが、当該従業員等が特許を受けたとき、使用者等はその特許権について当然に無償で実施することができる通常実施権を有します(特許法35条1項)。ただし、このままでは、使用者等は、特許発明を実施する権利しかなく、他社とライセンス契約等を締結するなどの行為はできませんし、自社だけが独占してその特許発明を実施する権利を保障されるわけでもありません。


リストマーク 職務発明について使用者に特許権を帰属させるにはどうすればよいのか?

あらかじめ契約や就業規則などに定めることにより、職務発明について使用者に特許を受ける権利や特許権を承継させることができる。この場合、従業員は相当の対価の支払を請求できる。
 職務発明については、あらかじめ契約や就業規則などに定めることにより、使用者等に特許を受ける権利もしくは特許権を承継させ(予約承継)、または使用者等のため専用実施権を設定することが可能です(特許法35条2項)。この場合、従業員等は、使用者等から相当の対価の支払を受ける権利を有します(特許法35条3項)。


リストマーク 相当な対価をどのように定めればよいか?

対価を決定するための基準の策定につき従業員等と協議し、当該基準を開示し、対価の額の算定につき従業員等から意見を聴取した上で、合理的な対価を支払うことが求められている。
 契約や就業規則などにおいて、対価について定めた場合には、原則としてその定めたところに基づき対価が決定されることとなります。
 ただし、契約や就業規則などにおいて対価について定める場合において、それが「相当の対価」と認められるためには、対価を決定するための基準の策定について従業員等との協議の状況、当該基準の開示の状況、対価の額の算定について行われる従業員等からの意見の聴取の状況など、その対価が決定されて支払われるまでの全過程を総合的に評価して不合理と認められるものであってはならないとされています(特許法35条4項)。
 契約や就業規則などにおいて対価についての定めがない場合や、その定めにより対価を支払うことが不合理と認められる場合には、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が行う負担、貢献及び従業員等の処遇その他の事情を考慮して「相当な対価」が算定されることととなります(特許法35条5項)。
 したがって、「相当な対価」に対して争いが生じた場合は、初めに自主的な取決めにより支払うことが不合理かどうかが判断されます。合理的であると認められた場合は、自主的な取決めによる対価が「相当の対価」になります。不合理と認められた場合は、最終的には裁判所の算定した額が相当の対価になります。


リストマーク 契約や就業規則などにおいて相当な対価を定める場合注意すべき点

参考資料のご紹介
 契約や就業規則などにおいて相当な対価を定める場合に注意すべき点については、特許庁ホームページの資料室で公表されている「新職務発明制度における手続事例集」や「規程・契約書例」がたいへん参考になります。契約や就業規則などの作成や、対価の決定のための手順の策定の際に参照されることをお勧めします。





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