相続の手続き@ (弁護士 寺澤政治)


法律相談の中で相続に関する相談はかなりの割合を占めます。相続についてはいろいろ難しい問題がありますので、弁護士に相談されることをお勧めしますが、ここでは相続の手続きの概略についてわかりやすく説明します(2006/4/9)。


リストマーク

相続をするかしないか?

相続人は、相続をする、しないを自由に決めることができる。ただし、相続をしない場合は、一定期間内に法定の手続きをしなければならない。
 相続とは、亡くなった方(被相続人)のプラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金など)も受け継ぐことになります。したがって、遺産を相続する場合、被相続人に多額の借金がないかどうかを確認する必要があります。被相続人が第三者の債務について連帯保証をしている場合など注意を要します。
 相続人は、相続をする、しないを自由に決めることができますが、相続をしない場合(相続放棄)は、相続の開始を知ってから3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述の手続きをする必要があります。
 また、プラスの財産の限度で、マイナスの財産を受け継ぐこともできます(限定承認)が、これを行う場合、相続の開始を知ってから3か月以内に、全相続人が一致して家庭裁判所に限定承認の申述の手続きをする必要があります。ただし、限定承認を行う場合は、税金の関係で難しい問題がありますので、あらかじめ専門家に相談したほうがよいでしょう。
 相続放棄や限定承認の申述の手続きをせずに上記の3か月が過ぎた場合、または、相続人が財産の全部または一部を処分したり、使ったり、隠したりした場合は、被相続人の財産(マイナスの財産も含む)を無制限に受け継ぐこととなります(単純承認)。
 なお、上記の3か月の期間については、調査が困難で相続放棄等の判断ができないなどの事情がある場合には、家庭裁判所にその伸長を請求することができます。


リストマーク

遺言がある場合の相続はどうなるのか?

遺言書に記載された遺言の内容に従って相続が行われる。ただし、遺留分の制限を受ける。
 遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、遅滞なく、家庭裁判所に提出して検認の手続きをしなければなりません(公正証書遺言を除く)。封印された遺言書は、家庭裁判所で開封されることになります(相続人が勝手に開封することはできません)。
 検認の手続きが済んだら、遺言書に記載された遺言に従ってその内容を実行することになります。
 遺言では、法定相続分にかかわらず特定の相続人に全部または大部分の遺産を相続させることもできますし、相続人以外の人に財産を与えることもできます(遺贈)。ただし、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人には、法定相続分の1/2に相当する割合が必ず承継されるべきものとされており(遺留分)、遺留分を持つ相続人(遺留分権者)は、その相続財産が遺留分に満たない(遺留分侵害された)場合、侵害された分の取戻し(遺留分減殺)を請求することができます。
 遺言に従って相続手続きを進めていく場合、相続人全員で行う必要がありますが、遺言執行者(遺言による指定、相続人の申立てによる家庭裁判所の選任)がいる場合は、遺言執行者が遺言執行のための一切の行為をすることとなります。
 なお、遺言の効力や解釈に争いがあるなど、遺言をめぐる問題が生じた場合は、弁護士に相談したほうがよいでしょう。


リストマーク

遺言がない場合の相続はどうなるのか?

法定相続人の間で遺産分割協議を行い、話し合いがまとまれば遺産分割協議書を作る。遺産分割協議で話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることになる。
 亡くなった方(被相続人)の遺言がない場合は、法定相続人全員の間で遺産の分割について話し合い(遺産分割協議)、話し合いがまとまれば遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議は全員の意思の合致により成立し、その場合どのように遺産を分けるかは自由です。
 遺産分割協議で話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることとなります。この場合、法定相続分に従って遺産の分割をすることとなります(なお、特別受益や寄与分という問題がありますが、これについては別稿とします)。また、遺産の範囲について争いがある場合(たとえば、ある財産が被相続人の名義になっているが、実際はある相続人の固有の財産であるというような主張がされた場合)は、訴訟を提起しなければならない場合もあります。いずれにしても、専門家である弁護士に相談したほうがよいでしょう。


リストマーク

法定相続人はどのように定められるか?

被相続人の配偶者は常に相続人になる。被相続人の血族については、相続人となる第1順位が子、第2順位が直系尊属、第3順位が兄弟姉妹とされている。
 被相続人の配偶者は常に相続人になります。
 被相続人の血族については、相続人となる順位について、第1順位が、第2順位(子がいない場合)が直系尊属(父母、父母がいない場合祖父母等)、第3順位(子や直系尊属がいない場合)が兄弟姉妹と定められています。子、兄弟姉妹については、相続の開始以前に死亡していたなどの場合は、その者の子が代わって相続することとなります(代襲相続)。
 胎児(ただし、死亡して生まれた場合を除く)、養子、非嫡出子(ただし認知の訴えができるのは被相続人の死亡の日から3年以内)も相続人となります。


リストマーク

法定相続分はどのように定められるか?

法定相続分は下表のとおり


第1順位(子)

配偶者1/2

子1/2

第2順位(直系尊属)

配偶者2/3

直系尊属1/3

第3順位(兄弟姉妹)

配偶者3/4

兄弟姉妹1/4

※子、親、兄弟姉妹が複数いる場合は、各相続分を人数で等分します。
※養子も実子と同様に扱われます。
※非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の1/2とされます。


具体例


被相続人に、妻と2人の子がいた場合の各相続人の法定相続分は、
妻 1/2
長男 1/4
次男 1/4
となります。



本サイトの記載内容や写真等は著作権法により保護されております。
無断で転載、複写することはできません。
トップページ以外への直リンクは禁止します。

(c) copyright, Lawyer MASAHARU TERAZAWA All rights reserved.